【茨城県】筑波学園病院 医師インタビュー vol.33

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人体の不思議に魅了され、医師の道へ一直線

―医師の道に進まれたきっかけについて教えてください。

子供のころから医療に興味があり、医学の本を読んだり、NHKで放送されていた「驚異の小宇宙 人体」というドキュメンタリー番組を夢中になって見たりしていました。医学には、分からないことがたくさんあるからこそ、面白かったのだと思います。ほかの職業は考えたことがなく、ずっと将来は医師になろうと考えていました。

―筑波学園病院にご勤務された経緯は?

 私の出身大学が筑波大学で、筑波学園病院は筑波大学の関連病院ですので、そのつながりで勤務することになりました。筑波大学の関連病院の中でも、当院は特に不妊治療を本格的に実施している施設になっています。

治療法の提案から妊娠の成功までを見届けられるのが生殖医療の魅力

―たくさんある診療科の中で産婦人科を選択され、生殖医療をご専門とされた理由を教えてください。

もともと、内科系と外科系の両方ができて、検査から診断、治療まですべて自分で診ることができる科に進みたいと考えていました。そうした中、学生時代に受けた産婦人科の講義が面白く、臨床実習でも手術に入ってみて自分に合っていると感じたことから、産婦人科を選びました。産婦人科は婦人科腫瘍、周産期、生殖医療の3本柱と言われており、研修時代にはこれらをひととおり学びました。その中でも、特に生殖医療を経験したときに、自分自身で治療法の提案から行った患者さんが妊娠されたときの感動がとても大きかったことから、生殖医療を専門として選択しました。

―やはり患者さんが妊娠されたときがいちばん喜びを感じる瞬間でしょうか。

 そうですね。妊娠の陽性反応が確認できたときは、患者さんと一緒に喜びを分かち合える瞬間です。また当院には産科も婦人科もありますので、妊婦検診で経過を診させていただいて、お産まで見届けることができるという幸せもあります。

―これまでのご経験で、特に印象に残っている患者さんはいらっしゃいますか?

 私は卵管の内視鏡手術を専門にしていますので、卵管閉塞だった方が卵管形成術をして自然妊娠したときは、医師をしていてよかったと感じました。

 

自然妊娠が見込める不妊治療の選択肢―卵管形成術(FT)を専門として実施

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卵管には卵巣の卵子を子宮まで運ぶ役割があり、子宮と精子が出会う場所でもあります。卵管が閉塞したり狭窄していると、受精ができなくなったり受精卵が子宮までたどり着くことができず、不妊症の原因となります。そこで、子宮口から卵管鏡を入れて、バルーンで閉塞や狭窄を広げるのが卵管形成術です。正確には卵管鏡下卵管形成術(FT)と言い、片側もしくは両側卵管で、子宮に近い部位に閉塞や狭窄がみられる患者さんが対象になります

―治療を受けるまでにどのようなステップが必要ですか。紹介状は必要なのでしょうか?

まずは子宮卵管造影検査を受けていただきます(要予約)。月経中に一度受診していただき、検査についての説明と、感染予防のための抗菌薬の処方を行います。

紹介状は必須ではありませんが、ほかの施設で検査や治療をされたことがある方は、それらの記録が参考になりますし、重複して検査を実施する必要がなくなりますので、あるとよりよいと思います。

不妊の原因が不明な場合は、一度受けていただくとよいでしょう。

―手術を受けられる患者さんは多いのでしょうか。 

FTは体外受精が保険適用になる前から保険で行うことができる治療ですので、以前は年間10件以上ありました。今は体外受精のほうに注目が集まっていることから、年間数件程度になっています。

 

泌尿器科の生殖医療専門医と連携した男性不妊の治療も可能

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 当院には、泌尿器科にも生殖医療の専門医がいるのが特徴です。男性のほうに原因がある場合は泌尿器科に紹介し、婦人科と連携をしながら治療を進めることが可能です。精液検査で精子が認められない無精子症に対して、原因別の精巣内精子回収術(TESE)を行っているほか、精子凍結保存にも対応しています。泌尿器科の生殖専門医自体が少ないため、市中の病院で女性不妊と密に連携して実施している施設はあまり多くありません。最近は保険適用で治療計画を作る際にご主人さんも同席いただけるようになり、精液検査の重要性や治療方針にもご理解をいただいています。

当院は合併症のある患者さんも他科と連携して診ることができ、泌尿器科(男性側)の生殖補助医療専門医、不妊カウンセラー、不妊コーディネーター、看護師などのコメディカルの多職種でチーム医療として行っている数少ない支柱の総合病院だと思います。

―男性も積極的に治療に参加されるようになったのはよいことですね。保険のお話がありましたが、現在の保険診療と自由診療の割合はどの程度になっているのでしょうか?

 昨年の割合では、約1割が自費診療になっています。当院では先進医療も実施していますが、今のところ保険診療との併用が認められていない治療は実施していないため、保険診療が基本となり、年齢制限と回数制限を超えた方が自費診療になっているという状況です。

 

女性医師の受診も選択可能。気軽な相談をファーストステップに

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婦人科や不妊外来はハードルが高いというイメージを持たれている方がたくさんいらっしゃると思います。当院は女性の医師も常駐していますので、月経のことや何か気になることがあれば、身構えずに相談に来てみてください。不妊治療を考えられている方は、一度検査を受けていただくとよいでしょう。薬物療法・手術療法・一般不妊治療・ART(生殖補助医療)を含めた様々な治療法の中から、個々の患者さんの最も適した治療を行うことを大切にしております。男性不妊についても、泌尿器科と連携して積極的に診療をしていますので、ぜひご夫婦で一緒にお越しいただきたいと思います。

―不妊治療には、外科治療や男性不妊など、体外受精以外にもさまざまなアプローチがあることが分かりました。先生のメッセージが治療を迷われている方に伝わり、受診のハードルが下がればよいと思います。