【東京都】フェニックス アート クリニック 胚培養士インタビュー vol.3

· 胚培養士インタビュー

 

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今回は、東京都渋谷区にあるフェニックスアートクリニックで胚培養士として勤める川口優太郎さんにインタビューを行いました。

川口さんは胚培養士のお仕事にとどまらず、不妊治療を受ける患者さんを対象としたセミナーや勉強会の開催、不妊治療専門施設の開業支援、生殖医療の技術的指導などを行い、生殖医療の専門家として活躍されています。


宇宙飛行士になる夢を叶えるために、医療の道へ

―はじめに、医療の道を選ばれたきっかけを教えてください。

今でもそうなのですが、私の夢は宇宙飛行士になることです。過去に宇宙飛行士になった方の経歴を見ると、医師などの医療分野の出身者がたくさんいたことから、医療関連の仕事に就くことが宇宙への近道だと考えました。こうして医療系の大学を卒業し、約1年間病院で働いたあとは、国際基督教大学(ICU)の大学院に入りました。なぜICUかというと、国際教育に力を入れていることももちろんありましたが、日本で初めて宇宙飛行士になった秋山豊寛さんの出身大学でもあったからです。

実は、2021~2022年のJAXAの選抜テストにエントリーし、書類審査、英語試験、教養試験を通過しました。今回のテーマとして、将来的な月や火星への移住を見据え、そのために必要となるバックグラウンドをもっていることが重視されました。生殖医療はもともとブタや牛などの畜産技術を応用していることもありますので、卵を扱う技術を生かして、月での生活に必要な食糧源としての家畜の生産に貢献できるのではないかと考えました。残念ながら最終選考まで進むことはできませんでしたが、宇宙へ行く夢はこれからも持ち続けたいと思っています。

 

―素敵な夢ですね。生殖医療に興味を持たれたのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

埼玉医科大学に在学中、オーストラリア・メルボルンにあるモナッシユ大学に留学しました。そこには世界で初めて体外受精で着床、妊娠まで成功させた生殖医療専門の研究機関があり、最先端の技術に触れたことがきっかけで、生殖医療に興味をもつようになりました。

 

採卵から移植までを担うのが胚培養士の仕事

―胚培養士のお仕事の流れについて、簡単に教えてください。

胚培養士の仕事は、「検卵」と言って、採取した卵胞液から卵子を取り出すところからスタートします。卵子だけでは治療を進めることができないため、パートナーに精液をとっていただき、この精液から良好な精子だけを集める「精子精製」という作業を行います。そして、卵子と精子を受精させる「媒精」を行います。媒精には大きく2つあり、1つが体外受精、もうひとつが顕微授精です。体外受精は卵子に対して精子を振りかけるように行う方法で、顕微授精は1個の精子をインジェクションピペットというガラスの針で捕まえ、卵子に直接刺して精子を注入して受精させる「ICSI(イクシー)」と呼ばれている方法です。媒精をしたら、翌日に受精したかどうかを観察します。受精していれば最大6日間培養し、胚盤胞というステージまでもっていきます。胚盤胞まで育ったら、胚移植を行うか、凍結保存をして体の状態を整えてから胚移植を行うことになります。このように、胚培養士は採卵から移植までの過程で重要な役割を担っています。

 


婦人科合併症は生殖医療と外科、両方の知識がある先生に診てもらうことが大切

―フェニックスアートクリニックの特徴を教えてください。

院長の藤原敏博先生は、生殖医療の専門医でありながら、外科的な知識や手術の経験も豊富で、婦人科合併症を診ることができる国内で数少ない医師です。そのため、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープといった婦人科の合併症を抱えながら不妊治療をしている患者さんがたくさん通院していらっしゃいます。当院の特徴は、こういった難治症例の患者さんで高い臨床成績を上げていることです。

―婦人科合併症は不妊の原因になると言われていますが、治療を行う際はどういったことに気をつけたほうがよいのでしょうか。

 子宮筋腫や内膜症は不妊症の直接的な原因となりますが、婦人科の中でも、不妊症を扱う生殖医療とこれらの疾患はまったく別の分野です。こうした疾患は、外科的な知識や経験を持ちながら、生殖医療に精通している専門家でなければ正しく扱えないことがあります。

筋腫は、よくサイズよりも場所が重要と言われていて、大きいものでも妊娠に影響のないところであればきちんと妊娠することができます。また、妊娠している間は筋腫が小さくなる傾向がありますので、妊娠してしまえば影響はそこまで大きくはありません。

しかしながら、こういった病変が実際の妊娠・不妊にどのくらい影響しているのかといった判断は、生殖医療の視点だけでは診ることができません。その一方で、外科が専門という先生になってくると、病変を取り除くことがメインになります。外科を専門とする先生の場合、いわゆる妊孕性(妊娠のしやすさ)までを考慮しないことがほとんどで、外科手術によって綺麗に病変は取り除けても、かえって妊孕性が低下してしまうこともあります。

婦人科合併症を持ちながら不妊治療をする場合には、妊孕性をいかに残しつつ病変に対処していくか。生殖医療と外科の両方の視点を持った先生に診てもらうことが重要なポイントです。

婦人科合併症を抱えて不安に思われている患者さんは、藤原先生に診ていただくことをお勧めします。

 

―フェニックスアートクリニックで働く醍醐味を教えてください。

藤原先生がこの業界のパイオニア的な存在ということもあり、さまざまな患者さんが通院され、普通では経験できないことを経験できるところです。当院では、全員に一律の同じ治療を提供するのでは無く、細部にわたって患者さんの状態を診て、ひとりひとりに対して、妊娠の妨げになっている原因をつぶしていきますので、後からどこが悪かったのかを振り返りながら新しい治療周期に臨むことができます。患者さんをしっかり診ていくことで、次のよりよい治療につなげることができます。

 

 

 

生殖医療に関する啓蒙活動・支援事業を展開

 

―川口様は胚培養士をされながら、リプロダクティブサポートファーム東京を立ち上げられました。なぜ、この事業を立ち上げようと思われたのですか?

妊活セミナーなどで話をさせていただく機会があり、その中で、多くの患者さんがご自身の妊娠率を認識されていなかったり、妊娠に対して楽観的に捉えていると感じることがありました。実際に、「Human Reproduction」という学会誌に2013年に掲載された論文で、生殖医療に関する知識レベルが日本は先進国の中で最下位という調査結果が発表されていました。われわれ専門家が目の前の患者さんの妊娠をサポートすることはもちろん重要なのですが、それ以上に生殖医療や妊娠に対する知識を広める啓蒙活動が必要だと考え、この事業を立ち上げることになりました。

 


―リプロダクティブサポートファーム東京の事業内容について教えてください。

一般の患者さん向けには、セミナーや勉強会、不妊カウンセリング、治療のコーディネートを中心に行っています。医療者向けの事業としては、技術指導やアドバイス、クリニックの開業支援、ラボのコンサルティングなどを行っています。そのほか、私自身が健康食品管理士の資格を持っていることから、妊活用サプリメントの監修などもさせていただいております。


―最後に、患者さんへのメッセージをお願いします。

2022年4月から保険適用になり、どこでも同じ医療が受けられることが基本ではありますが、実際はすべてのクリニックで同じ水準の治療を受けられるわけではなく、クリニックの特徴もさまざまです。なるべく最短で赤ちゃんに辿り着けるように、情報収集をしていただきたいと思います。治療について迷われたり、これから不妊治療を始めたいけれどどうすればよいのかわからないといったときは、いつでも相談してください。

 

―胚培養士にととまらず、コンサル事業でも活躍され、夢は宇宙飛行士という壮大なお話を伺うことができました。本日は貴重なお時間をありがとうございました。