【岡山県】岡山二人クリニック 看護師インタビュー vol.6

· 看護師インタビュー

 

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 今回は、岡山二人クリニックで20年以上生殖医療に携わられているベテラン看護師の大月順子さんにお話しを伺いました。大月さんは不妊症看護認定看護師としてチームをリードするほか、専任医療安全管理者として、重要な役割を担っています。

 

不妊に悩むカップルをサポートしたい

―大月様が看護師になったきっかけ、また生殖医療の領域に進まれたきっかけについて教えてください。

 病院に勤務していた母を身近で見ていて、看護師になりたいと思いました。最初に勤務した急性期の総合病院では、脳外科や術後回復室、整形外科など、主に外科系の看護師をしていました。生殖医療との出会いは、職場の同僚の不妊治療がきっかけでした。同僚は、岡山二人クリニックで体外受精を受けて一人目のお子さんを授かり、二人目の不妊治療を受けることになりました。

 治療が始まると、普段は健康的で明るい彼女が体調を崩すことや、落ち込むことが増えたのが印象的でした。同僚として何か力になりたいと思いましたが、そのころは不妊治療についての知識がなかったので、まずは勉強をして彼女の中で起きていることを理解したいと思いました。
 その当時は、不妊治療の専門書はなく、たまたま行った本屋さんで岡山二人クリニックの林伸旨理事長の本と出会い、勉強を始めました。その時の経験から、看護師として不妊に悩むカップルをサポートしたいという気持ちが強くなり、岡山二人クリニックに入職しました。

 

―岡山二人クリニック様に就職されていかがでしたか?

 産婦人科看護の経験が、まったくなかったので、初めはとても不安でした。医師をはじめ、先輩の看護師やスタッフの皆さんはこの仕事に情熱を持って取り組まれている方ばかりでした。不妊カウンセラーや体外受精コーディネーターなどの資格を取得している方も多く、丁寧に指導をいただき、不妊治療や不妊症看護について一から学ぶことができました。看護師として働きながら、医療安全管理や看護管理の勉強をしたり、学会で発表する機会もいただき、とてもやりがいのある職場だと感じました。

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ロールモデルの先輩に続いて、認定看護師を取得

―なぜ認定看護師を取得しようと思われたのですか?

 私が岡山二人クリニックに入職したのは、ちょうど日本不妊看護学会が設立され、不妊症看護認定看護師の教育課程が始まった年でした。その翌年に、当院の看護師の定本幸子さんが岡山県で初めての認定看護師を取得しました。定本さんはその後、看護師の指導にあたったり、看護の基準を作成したり、現在の望妊治療センターの相談部のもとになる看護相談というプロジェクトを開始するなど、私のロールモデルのような存在となりました。

 それから数年が経ち、2011年に生殖医療を専門に行う望任治療センターを併設することが決まり、定本さんが相談部、私が看護部の配属になることになりました。これを機に、専門性の高いチームを作りたいと思い、そのためには最新の不妊症看護の知識や技術を学ぶ必要があると考えたのが認定看護師を取得することになったきっかけでした。

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治療のプロセスや状況に応じて、必要な支援を行うことが認定看護師の役割

―実際に、認定看護師はどのような役割を担っているのでしょうか?

 認定看護師は医師やほかのチームと協働しながら、患者さんが安全に確実に安心して治療に取り組める環境を整える役割を担っています。特に、患者さんごとに治療のプロセスや状況が異なりますので、それぞれのカップルに合わせた正しい情報提供を行い、意思決定を支援することが私たちの役割だと思っています。患者さん一人ひとりのペースに合わせて丁寧に向き合い、治療に伴うストレスや不安を少しでも減らせるように努めています。
 私たちとのかかわりは、患者さんの生活の中で考えるとごく短い時間となります。患者さんが、こころや体の健康を保ちながら、治療に取り組んでいただきたいと思っています。また、これらの役割を、看護師とチームでおこなえるように指導していくことも認定看護師の役割です。岡山二人クリニックには、不妊症看護に熟練した看護師が多く在籍してします。看護師全員で役割を共有することが、患者さんにとってのより良い環境となると思っています。

 

―岡山二人クリニックさんならではの認定看護師の役割はありますか?

 外来でほかの看護師と一緒に看護業務を行うほかに、患者さんが治療や入院生活を安心して送るための管理・調整業務を担っています。認定看護師の介入が必要になると、外来や病棟の医師やスタッフからすぐに連絡が入る仕組みになっています。

 そこで申し送りを受けて、患者さんに必要なケアを判断します。痛みなどの身体的な問題があるときは、医師に病状を説明して追加の治療を行うことや、不安や相談ごとがあるときは相談部に引き継ぎ、生殖医療コーディネーター、臨床心理士、管理栄養士、福祉サービスや医療制度に詳しいスタッフなどから必要な支援を受けられるようにしています。患者さんが一貫したサポートを受けられるように、医師と他のスタッフ間で情報共有を行って、記録を残すようにしています。

 認定看護師のもうひとつの役割として、がん生殖医療の窓口も担っています。10年以上前から地域の医師や認定看護師、専門看護師と積極的にネットワークを作ってきたことでスムーズな連携が可能になり、急な精子凍結や卵子凍結などにも対応できるようになっています。これからも、一人ひとりの患者さんへ切れ目のない支援がおこなえるよう、活動を続けてきたいと思っています。

 

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保険適用後、女性の悩みはより複雑に。セルフケアの推進によって、仕事との両立につなげたい

―保険適用がスタートしてから、患者さんと向き合う中で変化を感じることはありますか?

 当院の場合は少子化の影響もあり、2020年以降も患者数には大きな変化はありませんでした。女性の初診の年齢が少し若くなったり、妊娠を希望してから受診するまでの期間が少し短くなったりという変化はありました。また、年齢制限や胚移植の回数制限があることで、他院で治療を受けられていて限度間近になり、異なる治療環境を求めて転院されてこられる患者さんも見受けられます。保険適用による制限は女性に紐づけられていることから、女性の悩みがより複雑になったのではないかという印象を受けています。

 

―今後保険適用の中で、認定看護師の役割はどのように変化すると思われますか?

 保険適用になってから不妊治療の社会的な認知度は上がりましたが、女性が治療と仕事との両立に悩む状況は変わらないことがさまざまなデータから明らかになっています。認定看護師として、治療と仕事の両立に悩む女性や男性へ支援の必要性を、社会や行政へ発信する役割を担っていきたいと思います。

 当院では、治療を受けやすい環境づくりの一環として、3年前から認定看護師によるオンライン相談を開始しました。また、待ち時間を短縮する取り組みとして、アプリを活用した情報提供に力を入れています。診療前に治療に関する資料や動画をアプリでご覧いただくことで、患者さんは医師が説明する言葉をより理解しやすくなります。医師の説明した治療のスケジュールや、自己注射や治療のお薬の資料もアプリへ送り、待ち時間に目を通していただくことで、お薬の受け渡しや説明もスムーズになりました。

 看護師は、自己注射や、薬の副作用への対処法、マイナートラブルへの対応など自宅でセルフケアが行えるように、わかりやすい資料づくりを工夫しています。特に、多くの患者さんが自己注射をされていますので、セルフケアを促進することで、生活と治療の両立につながるのではないかと考えています。

 

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カップルの大切な時期に寄り添い、治療中も変わらずに大切なご家族でいられるように

―患者さんへのメッセ―ジをお願いします。

 私は看護師として、患者さんに寄り添うマラソンの伴走者のような存在になりたいと思っています。お互いを信頼してご結婚されたカップルも、治療を始められたことで関係が変化することがあるかもしれません。ご夫婦の大切な時期に寄り添うことで、お二人がかけがえのない家族として変わらずに過ごしていけるように支援をさせていただきたいと思っています。

 また、私ひとりの力だけではなく、クリニック、岡山県、地域の生殖医療に関わる専門職や認定看護師の仲間と連携することで、患者さんが治療に取り組みやすい環境づくりや社会づくりにも貢献していきたいと思います。

 

―大月様のように、院内全体を見渡せる認定看護師の存在があると、より安全で安心できる治療環境につながりますね。本日は、貴重なお時間をありがとうございました。