【千葉県】高橋ウイメンズクリニック 医師インタビュー vol.27

· 医師インタビュー
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生命の誕生の喜びを分かち合える産婦人科を選択

―はじめに、医師を志した理由について教えてください。

 高校生のころ、将来は人と関わる仕事がしたいと思い、考えたのが①弁護士、②教師、③医師の3つの職業でした。その中で、いちばん興味のあった医学部に進むことを決めました。医学部を受ける生徒など滅多にいない田舎の学校でしたので、先生たちには驚かれましたね。

 

―なぜ産婦人科を選ばれたのですか?また生殖医療の道に進まれた理由を教えてください。

 他の科は「修復」というイメージがあるのに対して、産婦人科には「誕生」というイメージがあります。私の実家は農家だったので、牛や豚、にわとりなどを飼っていて、幼いころから動物のお産を見て育ちました。生命の誕生を扱う産婦人科に、通ずるものを感じたのかもしれません。誕生の瞬間に、皆で喜びを分かち合えるところに魅力を感じました。
 当初は、産婦人科の中でもお産に興味がありましたが、専門を決めるころになると、領域内では「不妊症」が大きなトピックとして取り上げられるようになりました。私が大学を卒業したのが、ちょうど東北大学で体外受精による一例目の赤ちゃんが誕生したころでした。

 お産は分野としてほぼ確立していましたし、4、5年である程度お産について学ぶことができたこともあり、次は不妊症について勉強したいと思うようになりました。そこで、一般病院として初めて体外受精に成功した虎の門病院の産婦人科に入局し、本格的に生殖医療を学ぶことになりました。虎の門病院では、2,000例以上の体外受精を経験するとともに、内視鏡などを用いた手術も経験させていただきました。

 

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患者さんから元気をもらえるのが生殖医療のいちばんの魅力

―生殖医療のどのようなところに喜びや魅力を感じられていますか?

 胚が2分割、4分割と成長していき人間になるということは未だに神秘的なことだと思いますし、生命の始まりに関われることには今でも喜びを感じています。ところが最近、歳のせいか自分の人生の意義を考えるようになると、別の意味での魅力を感じるようになりました。

 患者さんにお子さんが生まれ、「生活が一変しました」「人生が変わりました」と言ってくださったり、治療中は追い詰められた表情で通われていた患者さんが明るい声で「2人目も欲しいです」と話されているのを聞くと、自分の存在意義や、これまで自分がこの仕事を続けてきたことが間違っていなかったのだということを実感することができます。今は、患者さんから元気をもらえることが、生殖医療のいちばんの魅力だと思っています。

 

体外受精に限定せず、一般不妊治療、外科的アプローチを並行

―先生が治療や患者さんのケアで重視していることを教えてください。

 当院の不妊治療では、可能性を狭めないということを重視しています。もともと体外受精だけが専門のクリニックではなく、手術や一般不妊治療(タイミング法、人工授精)も実施しているのはそのためです。体外受精を中心にされている患者さんはいますが、その合間にタイミング法や人工授精を並行して進めるというのが当院のスタイルです。不妊症を総合的に捉え、患者さんの状態に合った治療法を当てはめていくことで、妊娠率を少しでも上げていこうというアプローチです。

 実際に、妊娠率は一般不妊治療が1に対し、体外受精が2という割合です。当院で妊娠される年間1200人のうち、400人が一般不妊で妊娠していることになります。患者さんには、選択肢をご自身で狭めないでくださいねとお話しするようにしています。

 

―そういうお考えに至るまでの何かエピソードがおありなのでしょうか?

 これまでに他院で体外受精や顕微授精をされてきた患者さんで、当院で体外受精の準備をしている間に自然に妊娠したということはよくあることです。「自分は自然妊娠できない」「体外受精しかない」と思い込んでしまっている患者さんがたくさんいらっしゃるように思います。

 もちろん患者さんが納得できる治療法である必要がありますの、信頼のおける技術を提供することは大前提として、必ず患者さんの希望を伺って治療法を決定するようにしています。

 

―治療についてのこだわりや、最新の治療法を取り入れるうえで意識されていることはありますか?

 私自身がもともと虎の門病院で腹腔鏡手術を実施していたり、クラミジア感染症による卵管癒着が原因となる不妊症の研究などをしていた経緯がありますので、それらが今の当院のスタイルにつながっています。特に、子宮や卵管の病気は注意をして診るようにしています。もちろん異常が見つかった場合には子宮鏡下手術や卵管鏡下卵管形成術は日帰り手術で対応可能です。

 新しい技術については、成績がよくなるのであれば、積極的に導入していきたいと考えています。そのためには、常に新しい知識をもっていなければなりませんので、今も勉強は継続しています。

 

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保険診療だからこそ、クリニック選びが重要

―先生のクリニックは、やはり千葉県内の患者さんが多いのでしょうか?

 以前は茨城や東京、遠いところでは北海道からも患者さんが来られていましたが、最近は不妊治療を受けられる施設が増えましたので、県内の患者さんがほとんどです。アンケート調査の結果を見ても、「通いやすい」という理由で病院を選択されている患者さんがいちばん多いという結果が出ています。治療で何度も通院が必要になりますので、やはり近隣の患者さんが中心になりますね。

―保険適用により、近隣のクリニックでも同じ治療を受けられるという認識が広まっているのでしょうか?

 それはあるかもしれません。ただ、気をつけなければならないのは、保険診療になったからこそ、なおさらクリニック選びは慎重に行う必要があるということです。料金が同じであれば、技術も同じというわけではありません。補助金で実施していたときは、各都道府県が施設の設備が整っているか、きちんとスタッフが配備されているかなどをチェックしていましたが、保険診療になったことで審査がなくなり、施設間の差が起こりやすい状況になっています。患者さんはご自身の目でしっかりと調査をして、クリニックを選ぶことが大切です。

 

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自分自身の妊娠できる能力を信じることで、選択肢は広がる

―保険適用前後で、男性側の治療へのかかわり方に変化はありましたか?

 不妊治療が社会的に認められたことで、男性側も病院に来やすくなったと思います。男性不妊についても、ここ数年でだいぶクローズアップされるようになりました。当院でも男性不妊の治療を実施していますが、これからより積極的に展開していこうとしているところです。

 

 

―患者さんへメッセージをお願いします。

 先ほどもお話したように、不妊治療の選択肢の幅を狭めてしまっている患者さんがたくさんいらっしゃいます。ご自身の妊娠できる能力をもう少し信頼してほしいと思います。それでもやはり年齢によって妊娠率はどうしても下がってしまいますので、お一人目はなるべく早めに考えていただくとよいでしょう。―先生のお話を伺って、貴院で体外受精と一般不妊、外科手術を並行して実施されている理由がよく分かりました。自然に妊娠したいと思われている患者さんは、勇気づけられると思います。本日は、大変興味深いお話をありがとうございました。