【神奈川県】メディカルパーク横浜 医師インタビュー vol.25

· 医師インタビュー

 

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大学病院で6,500件以上の腹腔鏡手術を経験
―医師を志したきっかけは?

 最終的には父が産婦人科医だったことに帰結するのだと思います。反発もあって、パイロットを目指していたこともあり、実は飛行機の免許を持っています。今は眼が悪くなってしまったので操縦は難しいのですが、小型セスナを使った遠隔医療といったこともできるとよかったなと思っています。

 

―産婦人科・生殖医療へ進まれた経緯について教えてください。

 私の経歴は少し特殊で、最初に入局したのはリハビリテーション科でした。そこを途中退局して行き場に困っていたとき、たまたま産婦人科の教授が声をかけてくださって入局することになりました。
同級生が先を行く中で、まずは臨床力をつけなければならないと考えていたところ、同科の武内裕之先生が腹腔鏡手術を始めることになり、一緒に手術をさせていただくことになりました。今は腹腔鏡でがんの手術が可能になりましたが、もともとは生殖医療で使われたのが始まりです。体外受精も、最初は腹腔鏡で行われていました。順天堂大学では腹腔鏡の講師を15年ほどやらせていただき、執刀も6,500件以上経験しました。

 

―腹腔鏡から生殖医療の道に入られたのですね。生殖医療のどのようなところに魅力を感じましたか?

 当時の生殖医療は何をやっても新しい時代でした。今日できなかったことが明日になればできるようになり、すべてが面白く感じました。最初は新鮮胚移植が当たり前で、凍結ができるようになっても初期胚凍結でしたが、そこからガラス化凍結法(Vitrification法)が登場し、培養器も進歩して胚盤胞まで培養できるようになりました。

学会に参加すれば誰かが新しい術式を発表し、自分も何か新しいことをやらなければと奮起させられました。こうした不妊治療と腹腔鏡下手術の変遷を目の当たりにする、とても幸せなことでした。

 

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内視鏡手術と不妊治療の融合によって、妊娠率を向上

―メディカルパーク横浜の特色について教えてください。

 当院のいちばんの特色は、内視鏡下手術(腹腔鏡、子宮鏡)と不妊治療を組み合わせた治療を行えることです。例えば、着床の妨げとなる子宮内膜ポリープを子宮鏡下で取り除くことによって、妊娠率を向上させることが可能です。当院で採用している新型の子宮鏡手術装置は、電気メスを使用せず、シェーバーによってポリープを吸い込むので、子宮内膜へのダメージを抑えることができます。ポリープの大きさや数によりますが、日帰り手術にも対応しています。
さらに子宮内膜症の場合にも、手術前に採卵を行うことで手術後の卵巣機能低下に備えることもできるようになっております。

 

―不妊治療に携わる中で、難しさを感じることはありますか?

 私たちができるのは、妊娠の確率を上げることだけです。年齢や病気などの原因によって、どうしても妊娠までもっていくことができない場合もあります。特に、年齢には勝てないのが歯がゆいところです。「とりあえず1人は妊娠できたけど、2人目をつくろうと思ったら結構な年齢になってしまった」「1人目は普通に妊娠できたので、2人目も大丈夫だと思っていたのに」という方がたくさんいます。

こうしたことは、性教育の歯止め規定に端を発していると考えています。若いうちに妊娠できる能力がどれぐらいあるのかが分かっていれば、子供が何人ほしいから、何歳ぐらいから生もうといった計画を立てることができるはずです。私自身も地道に情報発信を行っているところですが、最近はこうした情報が増えていますので、今後10年のうちに改善していくのではないかと期待しています。

 

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保険診療を推奨-検査も夫婦で受ければ保険適用に

―治療方針を決めるときや診療の中で意識されていることはありますか?

 2022年4月から不妊治療の保険適用が始まり、現在当院では9割以上の方が保険診療を受けられています。年齢制限や回数制限を超えてしまった方や、卵子凍結などは自費診療になってしまいますが、まずは保険でできる範囲の治療をしっかりとやりましょうというお話をしています。
時々、男性のみ一人で来て精液の検査をしたいと言われることがありますが、二人で来ていただければ保険で検査を受けることができますので、ご夫婦で受診することをお勧めしています。そうすれば、その後の治療もスムーズに始めることができます。

 

がん患者様の妊孕性温存や女性の計画的な卵子凍結をサポート

―先生は、がん生殖医療や卵子凍結にも力を入れられていますね。

 私自身、がん生殖医療を最初に推し進めてきたメンバーの一人で、日本がん・生殖医療学会の理事も務めています。神奈川県には、がん生殖医療の認定を受けた施設が4件しかなく、当院はそのうちの1つになっています。がん生殖医療とは、抗がん剤などの副作用によって卵巣や精巣の機能を失ってしまう可能性がある患者様さんに対して、妊孕性(妊娠する力)を温存するための治療です。具体的には、がんの治療が始まる前に、女性であれば卵子や卵巣組織、男性であれば精子を凍結保存します。パートナーがいる方であれば、受精卵を凍結することもできます。これを「医学的卵子凍結」と呼んでいます。一方、近年は加齢による卵子の老化に備え、健康な女性が行う「社会的卵子凍結」も、認知されるようになりました。

 

―卵子凍結にかける先生の思いについて、お聞かせください。

 順天堂大学に在籍していたとき、附属の浦安病院で、千葉県浦安市とコラボをして「卵子凍結プロジェクト」を実施したことがあります。このときは一般市民を対象に希望者を募り、最終的に29人の方の卵子凍結を行いました。その中から見えてきたのが、健康な女性も、「キャリアアップに時間がかかる」「現時点ではパートナーがいない」など、卵子凍結を必要とするさまざまな理由を抱えているということでした。
賛否両論はありますが、女性がライフプランを考えるうえで、卵子凍結はひとつの選択肢として、きっと役立つのではないかと考えています。ただ、私は「社会的卵子凍結」という言葉には違和感を覚えています。最近、アメリカでは新しい概念として、「計画的卵子凍結」が提唱されています。将来のためにご本人の意思で計画的に行うという意味で、私はこちらの「計画的卵子凍結」を用いるようにしています。

 

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20代でも気軽に受診を。将来のプランを立てるきっかけに

―最後に、患者様へのメッセージをお願いします。

 年齢はもちろん不妊の大きなファクターではありますが、子宮内膜症や子宮筋腫といった子宮と卵巣周りの病気が不妊の原因となっていることがあります。20代の方であっても、生理痛がある、出血が多いなどの気になる症状があれば、早めの受診をしていただくとよいでしょう。検査を受けて、異常がなければ安心ですし、受診したことで将来のプランを考えるきっかけになることもあります。婦人科は受診するハードルが高いと感じる方も多いと聞きますが、今は不妊治療も保険適用にもなりましたので、楽な気持ちでお越しいただきたいと思います。


―内視鏡手術の豊富な経験をお持ちということで、子宮の病気が見つかったときにも最善の治療を受けられるという安心感がありますね。また、女性が子供を産みやすい環境をいかにつくるかという、社会的課題にも真剣に向き合われているところがとても印象に残りました。本日はお忙しい中、ありがとうございました。