株式会社Revorf 医師インタビューvol.23

· 医師インタビュー

 

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―腎臓内科で勤務をされています。この領域に進まれたのはなぜでしょうか?

 もともとはひとつの臓器だけでなく、全身を診たいという考えがありました。全身を診る診療科となると、すべての臓器を画像越しにみる放射線科、もしくは小児科でした。研修医になるとき、一度は放射線科を志しました。その後、やはり人と関わりたいという思いから小児科に進むかどうかを考えたこともありました。しかし、京都大学の小児科コースで実際に研修をしてみると、大学病院の小児科は重症のお子さんが多く、現場の辛さを身に染みて感じました。次の研修先であった腎臓内科も、やはり全身を診る科であることを知り、成人を対象とする腎臓内科に進むことになりました。
 

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―患者さんと接するときに、心がけていることはありますか?

 腎臓病というのは、実は治らない病気です。治療をして病勢が進行するのを抑えることはできても、基本的には完治しません。薬で治療するよりも、患者さんの生活習慣のほうが重要になります。例えば、塩分を摂りすぎれば、どんどん悪化します。患者さんにとっては、いかに病気とともに生きるかということが重要になります。ですから腎臓内科は、患者さんがこの病気とご自身の体について理解することを手助けするための診療科ということになります。そのうえで、いかに患者さんに寄り添えるかを考えながら、診療にあたるようにしています。

 

―腎臓内科と生殖医療は、生活習慣や自分自身の体と向き合うという点で共通するところがありますね。

 まさにその通りだと思います。不妊症も自分の体で何が起こっているのかが分からないというところが不安につながっているところだと思います。それを理解することをサポートしたいという思いがあります。

 

自らが研究と臨床の橋渡しになるために、ビジネスの世界へ

―医師として働きながら、ビジネスに関心を持ち、会社を立ち上げられた理由を教えてください。

私は10年間の臨床経験の後、大学の研究室で4年ほど基礎研究を経験しました。しかし、こうした基礎研究で得られた技術は、臨床の現場に届くことはほとんどありません。そこで、自分自身が研究と臨床の橋渡しになればよいのではないかと考え、ビジネスの世界に足を踏み入れることになりました。

 

―なぜネオセルフ事業を始められたのでしょうか。

私が専門とする腎臓内科では、生活習慣病や自己免疫疾患の患者さんをよく診ます。関節リウマチなどの自己免疫疾患は、自分の免疫細胞が自分自身を攻撃してしまう疾患で、それらが血液の中で暴れてしまうと血管を傷つけてしまいます。自己免疫疾患発生機序の一つの要因としてネオセルフ抗体が関わっていると考えています

 

腎臓は体中の血管が集まる臓器で、たくさんの血が送り込まれ、そこから不要な物質だけを濾し出すという役割を担っています。そのため、自己免疫疾患の患者さんは腎臓に影響を受けやすいというメカニズムがあります。長年この疾患に関わってきたことから、こうした疾患の検査薬や治療薬を作ることができるネオセルフ技術の紹介を受けたときに興味を持ち、当社でネオセルフ事業を進めることになりました。

 

 

血の固まりやすさや血流の悪さが不妊症の原因になっている可能性

―生殖医療において、ネオセルフ抗体検査はどういった患者さんが対象になるのでしょうか?

 現在展開しているβ2GPIネオセルフ抗体検査は、β2GPIという血液中に存在するタンパク質に対するネオセルフ抗体検査です。これは簡単にご説明すると、血栓(血の塊)ができたり、血管に炎症が起きて血流が悪くなったりするような病態を捉えることができる検査です。こういった病態が、不妊症や妊娠してもすぐに流産したり、流産を繰り返たりしている習慣性流産の患者さんの体で起きている可能性があると言われています。これまでいろいろな検査をしても原因が分からず、早めにご自身の体の状態を理解したい方、不妊症の方、流産をご経験されたことがある方に、この検査を実施していただきたいと思います。

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―ほかにも検査法がある中で、ネオセルフ抗体検査を受ける意義を教えてください。

 同じような病態を調べる既存の検査では、患者さんの体の中の異常を検出するために、人工的に作り出したタンパク質を用いて検査を行っています。ネオセルフ抗体検査は細胞を用いて生体現象を正確に表した状態で行う検査ですので、高い割合で患者さんの異常を検出することができ、状態がどの程度悪いのかまで把握できると言われています。

 

―ネオセルフ抗体検査を受けて陽性だった場合、どのような治療が有効なのでしょうか?

 血が固まりやすかったり血栓傾向があったりする場合は、抗血小板薬療法や抗凝固療法が有効な治療法になります。抗凝固療法であればヘパリンの注射、抗血小板薬療法であれば低用量アスピリンの投与が推奨されています。簡単に言うと、ヘパリンやアスピリンは血液をサラサラにすることで血栓ができるのを防ぐお薬です。

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―ネオセルフ抗体検査はどこで受けることができますか?

 弊社のホームページ上に検査可能な医療機関を掲載しておりますので、そちらの各医療機関様にお問い合わせをいただくか、ホームページに記載のお問い合わせにご連絡いただければ、お答えさせていただきます。

 

―患者さんからよくご質問があることはありますか?

 侵襲的な検査なのかどうか、どういった内容の検査なのかというご質問をよくいただきます。ネオセルフ抗体検査は採血だけで実施できる検査ですので、手軽に安全に受けていただくことができますとお伝えしています。

 

 

不妊症の原因を理解したうえで治療を進められる領域にしたい

―末田様はRevorfの代表として、どのような活動をされているのでしょうか?

ネオセルフ抗体検査を多くの方に使っていただくため、クリニックの医師やスタッフの方にこの検査の意義についてご説明をさせていただいております。多くの先生がとても真摯に診療に携わっていらっしゃるので、ご自身のお考えも交えながら、エビデンスや原理などについて、多くのご質問をいただきます。そういったディスカッションを通して、この検査の意義をご納得いただいたうえで、実施いただくようにしています。

 

―ご活動をする中で、どのような時にやりがいを感じますか?

実際に医療機関を訪ねてご説明をさせていただくのは大変だと感じることもありますが、やはりこの検査を使用いただいた不妊症患者さんが検査で陽性になり、治療したことによって胎児を得ることができたという話を聞くと、この事業をしていて良かったと心から思います。

 

―ネオセルフ抗体事業をすることで、今後、不妊治療の環境をどのようにしていきたいと考えられていますか?

 私自身は、不妊症や不育症というのは病気なのかどうかがあやふやな分野だと思っています。通常、病気は体の中でこういった異常が起きているということが分かったうえで診断名がつき、治療法が決まります。しかし、不妊症や不育症というのは、その病態がなぜ起きるのかが判明するところまできていません。

この検査を普及させることによって、不妊症や不育症になる原因を正確に理解するための土台をつくり、患者さんや先生方が安心して治療を進められる環境にしていければと思っています。

 

 

―これからネオセルフ抗体検査を受ける可能性のある患者さんに、メッセージをお願いします。

 ご自身の体の状態を理解することは、とても大切なことです。この検査によって、不妊症や不育症の原因を知る以外にも、さまざまな病気の予防につながります。血が固まりやすい状態が続くと、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高くなると言われています。自分自身の体の状態をきちんと理解することで、例えば血をサラサラにする食生活に気を付けるきっかけにもなります。不妊治療の間だけでなく、ぜひネオセルフ抗体検査を将来にも生かしていただきたいと思っています。

 


―生殖医療の領域だけにとどまらず、多くの方が健康な生活を送るための検査ということですね。今後ネオセルフ抗体検査の普及がさらに進むとよいと思いました。本日は、ありがとうございました。