【愛媛県】つばきウイメンズクリニック 医師インタビュー vol.21

· 医師インタビュー


broken image

 

体外受精に興味をもち、早くから生殖医療を志す

―産婦人科医を志したきっかけは?

 私の場合は、もともと不妊治療に興味があり、大学病院の産婦人科に入局しました。入局当初は生殖医療のみを希望していましたが、がん治療やお産も経験するというのが教育方針でしたので、最初の10年ほどで卵巣がんや子宮がん、分娩など一通りの産婦人科経験を積みました。

―生殖医療を専門とされた理由を教えてください。

 カトリック系の高校に通い、宗教倫理を学ぶ中で、人の命というものに強い関心を持ちました。私が高校生のころは、すでに国内でも体外受精の成功例が報告されていました。初めて体外受精について知ったときは、「人の命の誕生にこんなにも深く関わることができる尊い医療があるのか」強く胸をうたれました。自分でも生殖医療に関わってみたいという一心で、医学部に入りました。
早くから生殖医療を専門とすることを心に決めていたため、研修医のころから人工授精の精子の調整をさせていただいたり、医師になって3年目から不妊外来を任せていただいたりと、他の医師よりも早い段階から経験を積むことができました。

 

地域の皆さまに愛されるかかりつけの産婦人科を目指して

―クリニックの運営において、こだわられているところはありますか?

 1つは、より専門性の高い上質な産婦人科医療を取り入れ、患者さんのニーズにこたえることです。
大学病院はリスクの高い患者さんが多く紹介されてきますので、大きなプレッシャーの中で診療を行っていました。こうした経験の中で得た知識や技術を生かし、女性の心身と笑顔を守る産婦人科医療を提供したいと考えています。
私は生殖医療だけでなく、女性ヘルスケア専門医も取得していますので、更年期障害、月経困難症、月経前症候群(PMS)など、女性が抱える体の不調や悩み全般に対しても、専門的なケアを行っています。患者さん一人ひとりの状況やご要望に、きめ細やかにフットワーク軽く答えていきたいと思っています。

 

broken image

 

―産科では、県内では数少ない無痛分娩もされているそうですね。

 妻が麻酔科のドクターだったことがきっかけで、無痛分娩を始めることになりました。少し前までは、愛媛県内で無痛分娩を本格的に実施している施設はありませんでした。当時の無痛分娩は、痛みがとれないうえに、陣痛がなくなり、最終的には帝王切開になるケースも稀ではありませんでした。
私自身はその印象が強かったため最初は否定的でしたが、きっかけは妻が埼玉医科大学総合医療センター産科麻酔科に半年間国内留学したことです。同院の照井教授のすすめで、無痛分娩で著名な京都の島岡昌幸先生に師事することになりました。

そこで見た初めてのお産が大変衝撃的でした。患者さんが笑った拍子に赤ちゃんがするっと産まれたのを見て、私は腰を抜かしました。それから開業までの2年間、大学病院が休みのたび京都に通い、無痛分娩のノウハウを学びました。

 

broken image

 

人工授精からスタートし、6割が1年以内に妊娠

―ご施設の治療において、先生が大切に考えていることは?

 当クリニックでは、テーラーメイド医療を意識しています。人工授精で妊娠できる方には人工授精を、体外受精が必要な方には速やかに行います。患者さんそれぞれに合わせた治療で、時間をかけず速やかな妊娠を目指します。


―妊娠まで、どれぐらいの期間がかかりますか?

 当クリニックでは人工授精を月1回ペースでした場合、通常、妊娠までに3~4か月ほどかかります。AIHで妊娠された方のうち3割が1回目、6割が2回目、9割が4回目までに妊娠されています。5回目以降は妊娠例が限られてきます。

このデータを基に、4回目の人工授精で妊娠しない場合は、体外受精へのステップをお勧めしています。体外受精の場合は、半年以内での妊娠を目指しています。トータルでは、1年以内での妊娠を目標にしています。
当クリニックでは、なるべく早く妊娠させることを目指しています。現在は保険適用によりやや制約がありますが、最初の1か月で可能な限り必要な検査を行い、患者さんの全体像を把握したあとに、治療のプランニングを行うという流れで治療を進めます。保険診療の場合は、胚移植が6回(40歳以上は3回)までとなり、なるべくこの枠内の中で妊娠に結びつけたいと考えています。

 

broken image


―体外受精の自費診療と保険診療の割合は?

 9割が保険診療で、残りの1割が保険適応のない自費診療です。着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)を希望される患者さんも自費診療となります。今後はPGT-Aが保険適用になるといいですね。
保険適用は制約もありますが、先進医療との組み合わせもできますし、きちんとした医療を提供できるようになっていると思います。たとえ患者さんが自費診療を希望されていたとしても、保険診療の範囲で十分に妊娠できると考えられる場合は、保険診療を勧めるようにしています

 

受精卵は赤ちゃんと同じように、大事に見守る

―診療の中で心がけていることは?

 私が胚培養士や看護師にいつも話していることは、受精卵も赤ちゃんも同じだということです。培養器のドアを閉めるときには、中で赤ちゃんが眠っていると思いながらそうっと閉めるようにしています。
胚培養士には、自分で採卵した赤ちゃんが生まれたら、なるべく見に行くように言っています。私が大学病院に勤めていたころは長く胚培養士がいなかったため、採卵から凍結、培養、顕微授精に至るまで、すべてを自分の手で行っていました。自分が手懸けた受精卵から産まれてきた赤ちゃんには、特別な想い入れがあるものです。こうした感覚を大事にすることが、生殖医療に携わる医療者として大切なことだと思います。

 

broken image

 

―患者様へのメッセージをお願いします。

 「必ず妊娠させる!」という強い想いで、妊娠を望むすべてのご夫婦と向き合っています。患者さんお一人お一人に合った「テーラーメイドの医療」で結果につながるよう全力を尽くします。一日でも早く赤ちゃんを望まれる方は、つばきウイメンズクリニックにぜひご相談ください。

 

―受精卵から赤ちゃんとして見守るというお言葉が大変印象的でした。本日は素晴らしいお話をありがとうございました。