【愛媛県】福井ウィメンズクリニック 医師インタビュー vol.19

· 医師インタビュー


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医療も、チームも自分の手で作り上げる

―産婦人科医を志したきっかけは?

 父が産婦人科医だったことがいちばんの理由です。泌尿器科に進むことを考えたこともありましたが、最終的には実家に戻って跡を継ぐという結論に至りました。

 

―生殖医療を専門とされた理由を教えてください。

 大学院時代、生殖医療の分野を専門とする先生に出会い、研究者としてその先生のグループに入ったことが始まりでした。体外受精は研究と臨床が表裏一体のところがあり、ラボでの研究がそのまま治療に応用されるところに惹かれました。教わったこともありますが、そのころはどんどん新しいものが開発された創成期でしたので、自分自身で手を動かして作り出しているという実感がありました。
開業医となった現在も、当時の研究者としての経験がベースになっています。臨床検査技師さんや細胞培養士さんも、自ら一から育てあげ、ポリシーを共有する大事なメンバーです。

 

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スタートラインにお互いの理解を深めることが大切

―ご施設の治療において、先生が大切に考えていることは?

 患者さんとのコミュニケーションは、当クリニックでいちばん大切にしていることのひとつです。初診時には、認定資格をもっている不妊カウンセラーによるファ―ストカウンセリングを受けていただき、患者さんの状況や状態についてお伺いをしています。

治療を開始する前には、基礎知識を深めていただけるよう、ご夫婦で動画を見ていただけるようにお願いをしています。ただし、動画を視ていただいたからと言って、我々の考え方を説明したことにはならないと思っています。実際に治療を行う前には、きちんとご夫婦とお話しをしたうえで、方向性を決めていくようにしています。

形式的に同意書にサインをいただくというのではなく、あとあと患者さんが後悔することのないよう、きちんとご説明をして、納得してから治療を進めます。常に、スタートラインを大事にしています。

 

ART専門施設として、多様なニーズに応じて信頼されるクリニックに

―先進医療を積極的に取り入れられている理由は?

 当クリニックは2021年12月にお産の取り扱いを終了し、現在、県内で唯一、不妊治療に特化したクリニックとなりました。これまで以上に施設間の連携が重要になりますので、周辺の施設からも信頼いただけるように取り組んでいます。紹介いただく患者さんには、難しい患者さんも多くいらっしゃいます。専門施設として、どのようなニーズにも応えられるように、極力最先端のものまで設備を含め、整えるようにしています。


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―治療計画を立てる際に、心がけていることはありますか?

 新しいものを取り入れることも大事ですが、その検査法や治療法が本当に安全で有効であるのかは、慎重に判断する必要があります。患者さんとっては、医師やスタッフの意見は大切なものですので、それだけ治療を提供する側の責任は重たいと思います。

目新しい治療に飛びつくのではなく、データと専門的知識を十分に得て、医師としての考えをもって、採用するのか、あるいは採用しないのか、しっかりとした答えを出してから、患者さんに提供する姿勢を忘れてはいけないと思っています。新しいものを取り入れたからと言って、むやみにコマーシャルに走らないようにしています。

 

自然排卵があれば安全で誘発剤を使用しない自然周期法で採卵も

―採卵に自然周期法や低刺激法を採用されているのはなぜでしょうか?

 当院では様々な排卵誘発法を行っていますが、その中で自然排卵のある方は、誘発剤を用いない自然周期法による体外受精も選択の1つとしています。この方法は薬の副作用による患者さんの体への負担も抑えられることや自然の内膜へ移植できることで着床向上や流産率の低下が期待できます。

自然周期法では特に若い方は1個の卵でも、高い割合で妊娠することができます。結果が出ない場合は、誘発法へステップアップしたり、逆に、誘発剤での誘発が難しい場合は自然周期法に切り替えることもあります。


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低刺激法は主に内服薬で卵胞刺激を行い、足りない分は注射を用いる方法です。自然周期と同様に注射の回数を減らすことで副作用や費用を抑えられるメリットがあり、またこれに胚の凍結保存を組み合わせることで仕事のスケジュールに合わせた治療計画が立てられます。いずれも少ない卵で勝負をすることにはなりますが、これまでの実績と経験から有用な選択肢であると考えています。


男性不妊には病気が隠れていることも―早めの検査と治療が必要

―男性不妊治療にも力を入れられていますね。

 男性不妊に対するニーズが高まってきたことを受けて、2か月に1回、男性不妊で著名な石川智基先生にお越しいただき、男性不妊の専門外来を行っています。その日は男性不妊のみを行い、20人の予約制で、手術も行います。結婚前や今から子作りを始めるという段階で受診をされる患者さんが年々増えている印象です。

精子の機能の低下には年齢が大きく影響し、35~40歳ぐらいで表面化してくると言われています。一方、精索静脈瘤という病気が隠れていることもあります。これは年齢とは関係なく、10代や20代の若い方で見つかることもあります

実際に、ブライダルチェックで検査をしたところ精索静脈瘤が見つかり、手術を行うケースも少なくありません。既婚者に限らず、検査をして病気を早期に発見して治療をする、不妊予防学という考え方が、男性不妊において重要なことだと考えます。

 

―患者様へのメッセージをお願いします。

 当クリニックは、「Friendly ART(フレンドリーアート)」をコンセプトとし、患者さんの心と体、費用の負担をできるだけ減らし、安心して治療を受けられる体制づくりに取り組んでまいりました。
2022年4月から不妊治療が保険適用となり、ARTはより身近なものになりました。不妊で悩まれている方は、女性も、男性も、早めに受診をしていただきたいと思います。