【愛媛県】梅岡レディースクリニック 医師インタビュー vol.18

· 医師インタビュー


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妊娠できずに困っている人の力になりたい

―産婦人科医を志したきっかけは?

 産婦人科医の長男として生まれ、幼い頃から父の仕事を見て育ちましたので、自分が後継ぎになるものだと思ってきました。医学部でほかの科も見て回り、脳外科にも興味はありましたが、やはり出産に関わり、唯一「おめでとう」と言える産婦人科にいちばんの魅力を感じました。

 

―生殖医療を専門とされた理由を教えてください。

 愛媛大学の産婦人科に入局したときの助教授の矢野樹理先生がとても面倒見のよい先生で、研修医1年目のころから不妊治療の診察に入り勉強をさせていただきました。お産がメインではありましたが、妊娠できずに困っている人の力にもなりたいと考えるようになりました。

その後、倉敷中央病院の産婦人科で不妊患者さんを診ることになり、生殖医療の方向へ進むことになりました。そこで体外受精や不妊治療にかかわる手技を学び、将来開業するときには、不妊治療とお産の2つを軸にしていこうと決めました。

 

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なるべく負担をかけずに、より自然な妊娠を目指す

―ご施設の治療において、先生が大切に考えていることは?

 当クリニックは、「お母さんの身体に優しい医療」を提供することを方針とし、より自然に近い妊娠とお産をサポートしたいと考えています。出産もできるだけ自然な形で行えるよう、フリースタイル分娩を取り入れていますし、不妊治療でも、なるべく体に負担が少ない優しい治療法を選択するようにしています。
これまでに排卵誘発剤を多用し、精神的にも身体的にも苦しくなっている患者さんをたくさん見てきました。また、治療にお金をかけすぎて、妊娠をして出産しても、その後の育児が大変という患者さんもいらっしゃいます。

出産はゴールではなく、成人になるまで育て上げるのがゴールです。そのようなことから、当クリニックは出産後のことまでを考え、精神的、身体的、経済的な負担をなるべくかけずに、いかに自然に近い形で妊娠できるかを追求しています。


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患者さんのストレスケアや産前・産後の講座も充実

―患者さんのストレスケアにも力を入れられているようですね。

 治療中の女性のストレスを緩和するために、漢方を併用したり、ストレスチェックを行ったり、妊娠しやすい体づくりのための妊活整体など、薬に頼る以外にできることを積極的に行っています。辛そうにしている患者さんにはスタッフが声をかけ、親身になってお話を聞いています。今後はカウンセリングも取り入れていきたいと考えています。

 

―妊産婦さん向けの産後ケアや講座も充実されていますね。

 妊娠中や出産後も、お母さんのためにできる限りのサポートをしたいと考えているうちに、少しずつ増えていきました。特に産後うつは深刻な問題と考えており、産後ケアのための新棟を増設しました。そのほか、マタニティ整体、母乳育児相談ヨガベビーマッサージなど、看護師が中心となり、外部の方にも手伝っていただきながらさまざまな講座を運営しています。

 

―今注目されている技術や最先端の治療法はありますか?

 比較的新しい治療法としては、子宮内膜が薄いことが原因で妊娠に至らない方のための治療法としてPFC-FD療法を採用しています。これは血液から抽出した血小板に含まれる成長因子を子宮内に注入する方法で、成長因子には細胞の成長を促す物質が含まれていることから子宮内膜が厚くなることが期待でき、受精卵が着床しやすくなると考えられています。

PFC-FD療法は再生医療として最近承認された治療法で、整形外科領域など、様々な分野で使われています。患者さんご自身の血から作製するため、アレルギーや副作用のリスクが少ないことから採用させていただいております。
また、子宮内や膣内の善玉菌のバランスを調べる子宮内フローラ検査も実施しています。子宮内の雑菌が増えると、受精胚を攻撃してしまうおそれがあることから、子宮内フローラのバランスが乱れている場合は、子宮内環境を改善するための治療やアドバイスを行っています。
ただ基本的には、当クリニックは私が一人で患者さんを診ていますので、難治性の患者さんが必要とするような高度な検査や治療法までは手を広げられていないのが現状です。なかには、より高度な治療を必要とする患者さんもいらっしゃいますので、その場合は責任をもって、適した治療が受けられる施設を紹介させていいただくようにしています。


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保険適用で患者さんが増加・夫婦の絆を大切に

―保険適用後で患者さんに変化はありましたか?

 患者さんの体外受精に対する躊躇がなくなってきたように感じます。不妊患者さんの数は、保険適用前と比べて2倍から3倍に増えました。保険適用になったことで経済的な負担が軽くなり、より高度な生殖補助医療(ART)に進まれる患者さんが増えてきたのではないかと思います。

 

―男性側のパートナーシップに関して、保険適用前後で変化はありましたか?

 人工授精の場合は旦那さんが毎回付き添いをしているわけではありませんが、体外受精では必ず夫婦揃って説明を聞いていただくようにお願いしていますので、男性側に対して非協力的と感じるようなことはありません。

当クリニックで必ずお話するようにしていることは、治療を目的にしてはいけないということです。子どもができないからといって、夫婦の仲が悪くなってしまっては何のために治療をしたのかが分からなくなってしまいます。お互いに話をして、どこまで治療を行うのかをあらかじめ決めておくことが大切です。

 

―患者様へのメッセージをお願いします。

 当クリニックでは、女性に優しく、極力自然で負担がかからない治療を目指しています。高度な治療が必要となっても、施設間連携が進んでいますので、ご安心ください。妊娠・出産を希望され、当クリニックの方針に賛同いただける方は、まずは気軽な気持ちで相談に来ていただけると嬉しく思います。